辻井喬

今度の大震災は非常に困難なタイミングに起きましたね。米国をリーダーとするグローバル経済の先が見えて産業構造が変わらなければならない時期に、経済大国である日本が大きなダメージを受けた。原発問題を含めればもっと事態は深刻。驚いた米国は最も有力な従属国に救いの手を差し伸べざるを得ないわけです。 言えることは、今までの日本の復活はないということです。 小さくて弱いものを抑えつける開発独裁型の政策は一応成功したが、今度の復興には通用しない。もう時代が変わったのです。中央と地域の関係も変化し、さまざまな格差や貧困も広がっている。被災地をどのように自主的な社会と経済にし、国がどう協力するのか。そこでは従来のパラダイム(社会的価値観)を転換する必要があるのです。 「頑張ろう日本、日本は強い国」というコマーシャルがあるでしょ。あれは今の実態を敗戦後の復興と同じようにとらえていて、どうするかという思想がない。どうも政府の考え方が昔のままのようでたいへん不安です。